障害年金とは

 
「障害年金」とは病気やケガで働くことが難しくなった方に支給される公的年金であり、公的年金に加入している全員が対象の年金です。障害年金は病名を問わず受給することができます。手足の障害や失明などの外見でわかる障害以外にも、うつ病、発達障害、がん、難病、内部疾患なども対象になります。原則として20歳~64歳までが対象の制度です。
 

 障害年金の種類

 
障害年金は、障害の原因となった病気の初診日に加入していた年金の種類によって、もらえる障害年金の種類が決まります。障害年金の種類は3つあります。
 
初診日に加入していた年金
 もらえる障害年金の種類
国民年金障害基礎年金
厚生年金障害厚生年金
共済年金障害共済年金
 
 
 ● 障害基礎年金
 
障害基礎年金は、障害の原因となった病気の初診日に自営業者、専業主婦、学生などが加入する国民年金に加入していた場合にもらえる年金です。次のような場合でも、この年金をもらえます。
 
・20歳前の年金に未加入であった期間の病気やケガにより障害になった場合
・国民年金に加入したことのある人で、60歳~65歳未満の間に初診日のある病気やケガで障害の状態になった場合
 
● 障害厚生年金
 
障害厚生年金は、障害の原因となった病気の初診日に一般の会社員などが加入する厚生年金に加入していた場合にもらえる年金です。
 
● 障害共済年金
 
障害共済年金は、障害の原因となった病気の初診日に公務員などが加入する共済組合の組合員であった場合にもらえる年金です。 
 

 対象疾病例一覧

 
弊センターでは精神障害を専門としており、その他の疾病は取り扱っておりません。
 
精神障害うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害、てんかん、知的障害、広汎性発達障害 、注意欠陥・多動性障害、高次脳機能障害、アルツハイマ一など
眼の障害ブドウ膜炎、緑内障(ペーチエット病によるものを含む)、白内障、眼球萎縮、網膜脈絡膜萎縮、網膜色素変性症、網膜剥離、腎性網膜症、糖尿病網膜症、癒着性角膜白斑など
 聴覚・平衡機能感音性難聴、突発性難聴、神経性難聴、メ二工ール病、頭部外傷又は音響外傷による内耳障害、脊髄小脳変性症、薬物中毒による内耳障害など
 鼻腔外傷性鼻科疾患
 口腔
(そしゃく 言語)
言語
上顎癌、上顎腫瘍、喉頭腫瘍、喉頭全矯出手術、失語症、脳血栓(言話)など
 肢体の障害事故によるケガ(人口骨頭など)、変形性股間節症、脊髄性小児麻痺、脳性麻痺、脳軟化症、脊柱の脱臼骨折、くも膜下出血、脳梗塞、脳出血、上肢または下伎の切断障害、重症筋無力症、上肢または下肢の外傷性運動障害、関節リウマチ、ピユルガー病、進行性筋ジストロフィ一、脊髄損傷、パーキンソン病、硬直性脊髄炎、脳血管障害、脊髄の器質障害、慢性関節リウマチ、筋ジストロフィ一、ポストポリオ症候群、脳卒中、脳脊髄液減少症、線維筋痛症、脊髄小脳変性症など
 呼吸器疾患肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎、肺結核、じん師、膿胸、肺線維症、呼吸不全など
 循環器疾患心筋梗塞、心筋疾患、難治性不整脈、大動脈疾患、先天性心疾患、重症心不全など
 腎疾患慢性腎炎、慢性腎不全、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎など
 肝疾患肝炎、肝硬変、肝がんなど
 糖尿病糖尿病(難治性含む)、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性と明示された全ての合併症など
 血液再生不良性貧血、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症、白血病、悪性リンパ種、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、HIVなど
 その他人工肛門、人工膀胱、尿路変更、クローン痛、潰瘍性大腸炎、化学物質過敏症、慢性疲労症候群、周期性好中球減少症、乳癌・胃癌・子宮頸癌・膀胱癌・直腸癌等のがん全般、悪性新生物、脳脊髄液減少症、悪性高血圧、その他難病など
 

 障害年金でもらえる金額

 
初診日に国民・厚生・共済のどの制度に加入していたのか、障害の程度はどの程度か、配偶者やお子様の人数によって変わってきます。最低金額で年間約60万円、最高で初年度1000万円以上もらえるケースもあります。
 
障害の程度である等級は、「~級」と表され、数字が少ない方が重度です。障害の程度は、1,2級は日常生活能力、3級は労働能力で主に判定され、受給額が決まります。障害年金の等級と、障害者手帳の等級とは異なりますので、ご注意ください。
 
具体的金額は以下のとおりです。
 
 
障害基礎年金

障害基礎年金は定額です。1級は2級の1.25倍となっています。

1級  777,800円×1.25=972,250円 (年間)
(+子供がある場合は更に加算額)
2級 777,800円 (年間)
(+子供がある場合は更に加算額)

子供の加算額

1人目・2人目の子 (1人につき)223,800円 (年間)
3人目以降の子 (1人につき)  74,600円 (年間)

※子とは次の者に限ります。 

・18歳年度末(高校を卒業する年齢)までの子供 
・障害等級1級または2級の障害状態にある20歳までの子供

  障害厚生年金

障害厚生年金の額は、厚生年金に加入していた期間の長短、給与の額(払っていた保険料の額)などで異なります。

1級の障害厚生年金の報酬比例年金の額は、2級の1.25倍です。

なお、若くして障害を負ってしまい厚生年金の加入期間が短い方は年金額が低くなってしまうので、加入月数300月未満のときは、300月として計算します。

1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級 (年間)
 (+配偶者がある場合は更に加算額)
2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級 (年間)
 (+配偶者がある場合は更に加算額)
3級 報酬比例の年金額 (年間)  
(最低保障額 583,400円)
障害手当金
(一時金)
 報酬比例の年金額×2年分
(最低保障額 1,166,800円)
 
 
配偶者の加給年金額 223,800円 (年間)               

 

● 障害共済年金

障害厚生年金と基本的な仕組みは同じですが、3階部分に職域年金相当部分がさらに追加されるのが大きな特徴です。

このように一口に障害年金と言っても、障害となりうる病気やケガが発生した時点でどの年金制度に加入していたかによって、請求先や申請できる年金の種類も変わってきます。

 障害年金の支給条件

     
障害年金をもらえるかどうかは、①~③の3つの条件を満たしている必要があります。
 
初診日要件
初めて診断を受けた日に年金制度に加入している必要があります。
保険料納付要件
保険料の納付状況が、一定の状態にあることが必要です。
障害認定日要件
障害認定日において、一定の障害状態にあることが必要です。
 
具体的には以下のとおりです。
 
① 保険料納付要件
 
その障害の原因となった病気やケガについての初診日(初めて医師または歯科医師の診察を受けた日)において、国民年金、厚生年金又は共済年金に加入していることが一つ目の条件です。
なお、年金制度に未加入であった20歳前の傷病により障害の状態になった場合や、国民年金に加入したことのある人で、60歳~65歳未満の間に初診日のある傷病により障害の状態になった場合でももらえます。(その場合は障害基礎年金の対象となります)
 
② 保険料納付要件
 
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち3分の2以上の期間が、次のいずれかの期間で満たされていることが必要です。
 
・保険料を納めた期間 (第3号被保険者期間も含む)
・保険料を免除された期間
・学生納付特例又は保険料納付猶予の対象期間
 
③ 障害認定日要件
 
障害認定日とは、初診日から起算して1年6か月を経過した日、又は1年6か月以内に傷病が治った場合はその治った日 (傷病が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含む) をいいます。ただし、以下の場合、特例として1年6か月待つことなく請求手続きができます。
 
人工透析を開始して3ヶ月を経過した日
人工骨頭又は人工関節を挿入置換した日
心臓ペースメーカー、ICD(埋込型除細動器)、CRT(心臓再同期医療機器)、CRT-D(除細動器機能付心臓再同期医療機器)又は人工弁を装着した場合は、装着した日
人工肛門の増設又は尿路変更術をした場合は、増設日又は手術のから起算して6ヶ月を経過した日
新膀胱を増設した場合は、増設した日
切断又は離断による肢体の障害は、原則として切断又は離断した日(障害手当金又は旧法の場合は、創面が治癒した日)
喉頭全摘出の場合は、全摘出した日
在宅酸素療法を行っている場合は、在宅酸素療法を開始した日
脳血管疾患による肢体障害等であって、初診日から6ヶ月経過後の症状固定日(初診日から6ヶ月経過で一律障害認定となるわけではなく、診断書等に「症状固定」や「回復の見込みなし」等の記載があれば、例外的に障害認定の診査が受けられるもの)
人工血管又は人工心臓 (補助人工心臓含む) の装着又は心臓移植の施術を受けた場合は、装着又は施術の日
現代の医学では、根本的治療がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6ヶ月を経過した日以後において、気管切開下での人工呼吸器 (レスピレータ) 使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき
遍延性植物状態については、その障害状態に至った日から起算して3ヶ月を経過した日以降に、医学的観点から機能回復がほとんど望めないと認められるとき
 
なお、障害認定日において障害の状態が一定の障害の状態に該当しなかった場合であっても、65歳に達する日の前日までの間に該当する状態に至った場合は、事後重症という形で請求が可能となります。
 

 障害年金に必要な書類

      
障害年金の請求に必要な主な書類は以下の4つです。
 
● 診断書 
● 受診状況等証明書 (別名初診日証明書で、転院していないときは不要) 
● 病歴・就労状況等申立書 
● 障害年金裁定請求書
 

① 診断書

診断書は、障害の内容によって、8種類に分かれています。通常は1種類の診断書でいいのですが、いろいろな傷病を併発している場合は2種類・3種類の診断書を作成する必要がでてきます。

診断書の内容としては、治療経過・各種検査データ・臨床所見などが中心ですが、その他に、日常生活動作・生活能力・一般状態・労働能力などの、本人でなければ把握できない項目も含まれています。

診断書は医師にしか作成することができませんが、日常生活の様子などは本人に確認しなければ書くことができません。つねに主治医とコミュニケーションしっかりとって、普段の生活の様子をきちんと伝えることが重要です。

② 受診状況等証明書

受診状況等証明書は、診断書作成医療機関と初診時の医療機関が異なっている場合に、初診時の医療機関で取得していただく証明書類で、よく「初診日証明」とも言われます。

ただし、医師法によってカルテの保存期間は5年となっていますので、初診時の医療機関が5年以上前だったり、初診の医療機関が廃院していた場合は、受診状況等証明書が取れない場合もあります。その場合は「受診状況等証明書が添付できない理由書」付けて提出します。

請求者が初診日から継続して同一の医療機関で受診されている場合は、提出された診断書によって初診日における医師の証明が確認できますので必要ありません。

③ 病歴・就労状況等申立書

病歴・就労状況等申立書は、国民年金・厚生年金共通の書式です。

病歴・就労状況等申立書(申立書)は、請求者が発病から初診日までの経過、現在までの受診状況および就労状況等について記載する書類です。

請求者側が自ら作成して申告できる唯一の参考資料であり、自分の障害状態を自己評価して行政にアピールできるのは、この申立書以外にないので、できるだけ具体的に、発病から現在までの病状・治療の流れ、日常生活の様子が目に見えるように作成する必要があります。

しかし、診断書との整合性が必ず求められますので、細心の注意が必要です。たとえば、診断書の内容が2級相当なのに、1級相当の申立書を書いたらその内容が疑われてしまいます。また、3級相当の申立書を書くと、せっかく診断書が2級相当なのに3級と認定されてしまう可能性もあります。2級相当の診断書に対しては、しっかりと2級の内容の申立書を作成しなければなりません。

④ 障害年金裁定請求書

障害年金裁定請求書は、請求者の氏名や住所、配偶者や子などのデータ、その他請求にあたっての基本事項を記入する書類で、障害年金の請求は、この障害年金裁定請求書に診断書などの必要な書類を添付して行います。

障害年金裁定請求書は「障害基礎年金」用と「障害厚生年金」用とに分かれます。両者の違いは、障害厚生年金では2級以上の場合配偶者加給年金が支給されますので、配偶者に関する詳しい情報を記載するようになっています。 

 障害年金の認定方法

障害年金の裁定請求書が提出されると、申請者が障害年金を受給するための「加入要件」・「保険料納付要件」・「障害状態要件」を満たしているか否かを日本年金機構が確認します。

具体的な流れとしては、まず年金事務所が内容を確認し、年金を受給するために必要な資格があるかどうかを判断します。その後、障害の状態を認定医が判断します。

障害を認定するにあたっては、疾病ごとではなく障害ごとに障害認定の基準にあてはめて、その等級を決定することになっています。

なお、審査は診断書などの資料を見て客観的に判断します。

つまり、審査は診断書や申立書などの書類の内容ですべて判断しますので、いかに、最初に正しい書類を作成するかが非常に重要となります。